泰山館考(寄稿文)

by shunichi furuya

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私事ではありますが、思いあって、現在目黒区の泰山館に住まいを移して
半年あまりが過ぎました。目黒区東が丘にある泰山館は大きな中庭を有した
34戸の賃貸住宅です。今回この誌面をお借りして、いかにして泰山館の価値が
保たれているか、私の私見を述べさせていただきます。

泰山館は駒沢オリンピック公園にほど近く、近隣に呑川、柿の木坂緑道や東根公園など
多くの緑に囲まれた環境に位置します。平成2年(1990年)に建築家の泉幸輔氏により
設計されました。手摺に用いられている穴空きのブロックや木製の手摺、各戸ごとにデザイン
アレンジされた玄関扉、高低差に応じて波打つ軒ライン、これらの意匠が中庭を取り囲み
あたかも異国の宿泊施設のような様相を呈しています。
それらの意匠に融和する形で沢山の樹木が中庭には配されています。
まず建物の名称にも冠されている、泰山木の大木がセンターに鎮座しています。泰山木はモクレン科
の常緑高木でハクモクレンよりも大降りな花弁をつけ、非常に魅惑的な芳香が楽しめます。
比較的多きめの艶感のある葉の印象が、中庭の雰囲気を一種、日本ではないような感覚を抱く要因に
なっているようです。

この原稿を書いている4月の初旬には多くの花を楽しむ事が出来ます。
天の川というサクラの品種が紅白で、拙宅の玄関の前に彩りを与えてくれています。また花壇に植え込まれた
すみれやチューリップ。ユキヤナギやアセビなど。またこれからシャクナゲやハナミズキの花も楽しめ
この住宅に住めている事に幸せを感じる瞬間です。
もちろん全ての人が私のように植物好きではないでしょうが、都心の住宅にあってこれだけの緑環境が
肌の触れ合う距離で存在している事は、それはもう疑いようもなく、賃貸住宅としての質的貢献に寄与している
ことは間違いがありません。

このような緑もりもりの空間が保たれ、いつまでも価値を保ち続けている要素を住民目線でお伝えします。
一つは2日に1回は行われる、近所の気のいいご夫人によるお庭を含めた共用部の清掃。もうそれは丁寧に
細部に至るまで掃き込まれた様相は、生活している我々に清々しさを感じさせてくれます。
庭は人の手が入り、愛情が注がれると面白いくらいに表情を変えていきます。
それともう一つ。それは垣間みられるオーナーさんの物件に対する思い。一つのエピソードですが
我々家族が引っ越してきて数日のある日トイレが流れなくなりました。築後20年もたてば当たり前のように
起きる設備トラブルかと思います。賃貸契約も直接お話させていただいた経緯もあって、ご相談さし上げると
すぐさまあのスッポンするやつを持って駆けつけてくれる訳です。通常の賃貸住宅だと契約先の設備業者さんがきて
その対応が悪かったりすると些細な事でクレームになったりするんですが、すっぽん、すっぽんしているオーナさんの
背中を眺めているとそんな気なんておこらない訳です。
このように緑の有り様と賃貸管理の哲学は繋がっているように思う次第なのであります。